Kritaの開発資金について
フリーソフトウェアであっても、開発資金は必要です。お金はそれ自体に価値があるだけではなく、様々に役立ちます。開発貢献者の集まりの交通費や宿泊費用にも、コードを書き、ドキュメントを書き、アイコンやその他をグラフィックを書く時間にも、ソフトウェアをテストし開発するハードウェアにもなります。
そうした背景のもと、KDEは開発スプリントのための寄付キャンペーンを行っていて、 Synfigはフルタイム開発者を雇うための寄付キャンペーンをしています。Kritaは、資金提供による開発を継続的なものにしようとしています。もちろん、Blenderは既にそうしたことをしています。
ただ、開発の資金集めには微妙なバランス感覚が必要です。Kritaのフルタイム開発者への資金支援を開始した時には、開発のために一部のコミュニティメンバーに資金を出すと、他の資金を受け取らないメンバーのやる気を削ぐのでは、と懸念する声がありました。Google Summer of Codeでもそうした懸念は既に出ていました。そして、会社がコミュニティのメンバーを雇用して、結果としてプロジェクトが潰れる、という例も世の中にはあります。
今のところ、Kritaではそうした問題は起こっていません。うまくいっている理由の一つは、資金の使い道を明確にしてきたことにあるかもしれません。Lukasのケースでは、Kritaの作業をするか、それともつまらないWeb開発をするか、という選択を迫られていました。Lukasのゴールはバグ修正とパフォーマンス問題への対応で、その当時には他に修正作業をする時間がある人がいませんでした。Dmitryは大学を卒業する時で、仕事が必要でした。そしてKritaの開発から彼を失いたくないと思っていました。
結局のところ、開発者は必要な生活費を得て、Kritaのために書かれたコードは一行ずつ増えていきます。増えたコードは、開発速度の増加に繋がり、Kritaはさらに興味深いプロジェクトとなって、貢献者は増えます。これは素晴らしいサイクルです。そしてKritaを良くするためにできることはまだまだたくさんあります!
では、Kritaの開発資金を集めるために今私たちがしていること、私たちのゴール、そして現在の予算はどのようなものでしょうか?
今現在行っていることは以下です:
- グッズ販売: これはうまくいきませんでした。専用のWebショップで、トートバッグ、マグカップといったものを売ることを試してみましたが、売り上げ合計は数百ユーロで、釣り合いませんでした。
- トレーニングDVDの販売: Ramon MirandaさんのMuses DVDは今でも成功しています。物理コピーもダウンロードも同じ値段です。今年はTimothée Gietさんによる「Secret of Krita(Kritaの秘密)」という新しいDVDを出す予定で、今週あたりからUSBスティック(クレジットカード型)にトレーニングDVDとポータブル版のKrita、Windows、OSX、それとおそらくLinux版も収録したものの販売を開始することになります。
- Krita開発基金。2種類です。Kritaのファン向けには、個人のユーザ向けの開発基金があります。Kritaへの毎月の送金額を決めると、Paypalか銀行送金で自動的に送金を行います。企業向けの開発基金では最低額が月額50ユーロで、開発チームが作成するCentOSビルドへのアクセスが得られます。
- 個別の寄付。これはどれだけパブリシティがあるかに大いに依存していて、時々高額の寄付もあるものの月々どのくらいになるかは推定が難しいです。ただ、量としては多いものになります。寄付をしてくださった方には手書きの感謝メッセージ付のメールをしています。
- また、SteamでもKritaの販売をしています。ここでは問題が起こっています。タブレットとデスクトップGUIの切り替えができるKritaのGemini版は、2.9リリースでうまく動かなくなっています。ただ、Steamユーザは2.9デスクトップ版の新しいビルドを入手できるようにもなっています。Stuartさんが手助けをしてくれていますが、私たちはSteamでのコミュニティのためにもっと頑張る必要があります。
- さらにクラウドファンディングキャンペーンがあります。毎年のKickstarterです。準備には約1か月フルに必要で、この準備を惜しむと後で困ることになり、リワードの送付などにも膨大な作業が必要です。リワードの送付作業は、実際は作業志願者に寸志を渡して行ってもらっています。今年は2つ目のKickstarterを行うことを検討しています。収入を確保し、KritaのOSXの移植を完成させることを目的にしたものです。2015年のKickstarterキャンペーンでは27,471.78ユーロが集まりましたが、これからリワードを購入して送付する必要があり、それには5000ユーロほどかかる見込みです。
- Patreon。私はPatreonサイトを検討していますが、Patreonの見返りに何を提供するかまだわからないため、まだシステムは動いていません。
- バグ懸賞金。ここでの問題は、一般の人がバグを直すのに必要と見積もった金額が、Kritaのように開発が安価なプロジェクトにとっても、かなり非現実的ということです。現実的には、1日の作業に、250ユーロほど見積もる必要があります。いくつか見積もりを用意したのですが…XCFファイルからグループレイヤーを読み込めるようにするための開発でも3日間はかかるということを考慮すると、大部分の人は個々のバグ修正に値段をつけると受け入れられないのです。
2015年の8か月での合計は以下です:
Paypal (グッズ、トレーニング教材、開発ファンド、Paypal経由でのkickstartar、個人からの寄付) | 8,902.04 |
銀行口座に直接振り込まれた大きな寄付、KritaをQt5に移植するための開発資金スポンサーの寄付を含む | 15,589.00 |
Steam | 5,150.97 |
Kickstarter | 27,471.78 |
合計 | 57,113.79 |
つまり、Krita財団の今のところの一年の予算は、大体65000ユーロになり、Dmitryをフルタイムで、私(訳注:boud)をパートタイムで雇用するには十分な量です。目指す第一のゴールは、私がKritaにフルタイムで働けるようにすることです。KO(訳注:KO GmbH、以前Kritaの開発に関わっていた会社)が分解してしまってから、それは難しくなってしまいました。私は5か月間、Blue SystemsのためにPlasma Phoneのプロジェクトの開発をしてきました。これも素晴らしい経験でしたが、Kritaの開発にとっては、コード面でも、ユーザの増加、貢献者の維持についても、直接の影響が出てしまいました。
他に試してきたことは、VFXスタジオやゲームスタジオへのアプローチです。サポートとカスタム開発の売り込みです。まだ、大きな成功はありません。どうしてなのか悩ましいです。そうしたスタジオはLinuxを使っています。使うソフトは、2Dペイントを除いてはLinuxで動いています。KritaをLinuxで使いたいと思っています。そうしたスタジオと話すと、彼らはKritaが欲しいと言います。ただ、この機能が足りない、何かを向上させたいという話になり…そして私たちはカスタム開発のコストとしてはとても控えめな見積もりを出すのですが、結果として沈黙が返ってきます。
Kritaの開発は実のところ、安価です。間接費は一切かかりません。経営管理も事務所もなく、多少のハードウェアが必要となるだけです。5000ユーロがあれば、1か月、1人のフルタイムの開発者をまかなった上で、残りをハードウェア、開発スプリントや、管理ソフト、切手や封筒といった他のコストにあてることができます。最初の目標は予算を2倍にして2人のフルタイム開発者を持てるようにすることですが、それからさらに、私を含めて4人か5人のフルタイム開発者を持てるように、1年に約300000ユーロの予算を目指したいです。それだけの予算があれば、既存の2Dペイントアプリケーションすべてを越えることもできるでしょう。AdobeやCorelでは1人の開発者の1年の予算がそのくらいかもしれませんが!
この現状から、次は何をすべきでしょうか?私は今でも、Kritaを商用のプロフェッショナル環境で使いたいと思っている人や組織が直接関与することなしには、目標の予算には到達できないと思っています。私は技術者寄りすぎるかもしれません。KOが失敗したことにも理由がありますし、セールスがうまくないということもあります。どうすればKritaを応援することが勝ちに繋がると、多くの人と繋がって納得させることができるでしょうか?答えがある人は返信をいただけるとありがたいです!