Krita 3.0が遂に正式リリースされました!どんなプロジェクトでもメジャーバージョンアップは常に興奮するものです。新しいスタートを切ったような感じです。そして3.0ではいくつもの新たなことを始めています。まず、Kritaは遂に独立したリポジトリにコードを置き、独立したWikiにマニュアルを置くことになりました!ですので今回のリリースはまず春の大掃除としてKritaを将来の将来のメンテナンスを容易にするため必要なQt5とKF5への移植を行い、それだけにはとどまらずコードの整理を行い、要らないコードを削除し全てのファイルを再構成しました。
そしてもちろん、レンダリングシステムのコアを書きなおしています。これこそ待ち望まれていた成果でしょう。文章より図で説明してくれた方がいいという人はGDQuest氏のKrita 3.0 Video Review をチェックしてください。
本当の意味での2Dコマ撮り方式アニメーション製作機能 ついに本当の意味でのコマ撮り方式アニメーション製作機能がKritaに実装されました。再生速度の設定及び前後フレームの表示機能がついた複数レイヤーでのアニメーション製作機能が、今までのKritaの機能をそのままに実装されています。これはあらゆるアニメーターの制作欲をくすぐるのに十分なものでしょう!
アニメーション可能なラスターレイヤー –ラスターレイヤーは複数のフレームを持てるようになり、タイムラインドッキングパネルから各フレームの並び替え等の操作を行えます。あらゆる色空間及び色深度でも使用可能です!
前後フレームの表示 –この機能を使うと前後の複数のフレームを重ねて表示することができます。中割りを描くのに重要な補助となるでしょう!
連番画像をインポート –あらゆる種類の連番画像をアニメーションレイヤーとしてインポート可能であり、その際には名前で連番画像の順番を自動で並べ替え可能です。
連番画像をエクスポート –Kritaで作ったアニメーションを連番画像として出力し、他のプログラムでの編集が可能です。
新たなドッキングパネル –タイムラインドッキングパネル・アニメーションドッキングパネル・前後フレームの表示ドッキングパネルが新たに追加されました。
CSVインポート・エクスポート –複数レイヤーでのアニメーションについてこのプラグインからTV PaintやBlenderとのデータやり取りが可能です。Laszlo Fazekasさんが開発を行いました。
Spriter SCMLエクスポータ –Kritaでベースとなる画像を作り、これをラスターベース・トウィーン形式のゲーム向け2Dアニメーション制作ソフトであるSpriter用に出力できます。 速く、強力に、即座に! VIDEO
タイムラインドッキングパネルを実装すること自体はそこまで難しいことではなかったのですが、アニメーションの再生をカクつかないようにすることは相当難しいことであり、リアルタイムでの再生ができなければKritaのアニメーション製作機能はただの子供だましになってしまうことが明らかでした。それゆえ処理の高速化は至上課題となっていました。
アニメーション再生のためのキャッシュ –これによって様々なフレームレート、再生速度で適切にアニメーションの再生を行えるようになっています。
大きなキャンバスでも快適に描画を行えるようにする高速プレビュー! –OpenGL 3.0の機能を活用することにより1000ピクセルの大きさのブラシでもスムーズに描画が行えるようになりました!
コマ落ち –低速なデバイス用にコマ落ちでの再生を可能にしてあります。これによって常にアニメーションを目的の再生速度で見ることができるようになっています! レイヤー操作の効率化 VIDEO
新たなレイヤー操作を追加しました
レイヤー結合の操作をシンプルに –ホットキー一つで全てを統合できます!
複数レイヤーの操作の大幅な機能向上 –Krita 2.9では複数レイヤーの選択とドラッグ&ドロップ機能が実装されていました。これを移動、キャンバス上からの選択、結合、複製等にまで拡張しました!
速やかなレイヤーの選択 –全て/表示/ロックされたレイヤーを一度に選択でき、またキャンバス上からShift+R+クリックでもこの操作を行えます
レイヤーのプロパティの一斉編集 –複数のレイヤーの名前、ブレンドモード、不透明度等あらゆるプロパティを即座に編集できます
複数のレイヤーのグループ化 –クリッピンググループの作成、グループ化の解除をホットキーから行えます。
レイヤー管理のためのユーザーインターフェースの改良
レイヤーを管理する最も重要な部分とそこに何を表示すべきかということについての議論を我々は長い時間をかけて行いました。3.0からレイヤードッキングパネル全体がアップデートされました。見た目だけではなく、さらにいくつかの新機能が実装されています。
レイヤー表示のコンパクト化 –レイヤーの表示をコンパクトに整理し、一度にもっと多くのレイヤーを表示できるようにしました
色タグ付け –レイヤーを右クリックして色タグをつけることが可能です。
色タグでのレイヤー分類 –色タグからその色のレイヤーのみを表示することが可能になっています。 ショートカットの改良!
ショートカット設定の切り替え –もしPhotoshopやPaint Tool Saiのショートカットの方が慣れているという場合は、KritaのショートカットをワンタッチでPhotoshop及びSai準拠のショートカット に切り替えられます。切り替えは設定→ショートカット設定から行えます。
ショートカット設定の保存及び読み込み –自作のショートカットを友人や仲間と共有できます!
ショートカットの再整理 –ショートカットがよりわかりやすい形に再分類されました!
ショートカットのCtrl/Altの切り替え –設定にショートカットのAltとCtrlを切り替える新たな設定が追加されました。
輝度に基づいたホットキー –明度の上げ下げの操作がしっかり色管理されるようになり、正しい輝度を使うようになりました。
赤寄り/緑寄り/青寄り/黄色寄り/色相/彩度ホットキー –描画色の色相・彩度の変更及び描画色を赤寄り・緑寄り・青寄り・黄色寄りにする等の微調整を行う操作を追加しました(詳細設定も可能です) グリッド、基準線及びスナップ
グリッド・基準線ドッキングパネル –グリッドと基準線用のドッキングパネルです!
グリッドと基準線の見た目の変更 –グリッドと基準線の見た目を別個に設定できます。
グリッド・ガイドをドキュメントごとの情報として保存可能に –グリッド設定を全てのドキュメントで共通にするのはバカバカしいことでした。3.0からはテンプレートを設定可能になります。
スナップ –様々なツールがグリッドと基準線へのスナップをサポートするようになりました。
スナップ設定へのアクセスをより効率的に –Shift+Sでスナップ対象ポップアップを表示できるようになりました。 ユーザーインターフェース
ポップアップパレットの改良 –ブラシプリセットアイコンが見やすくなりました
ドキュメント新規作成スクリーンをコンパクトに –ノートパソコンの小さい画面でも大丈夫なように修正されました。
色空間ブラウザを大きく改良 –トーンレスポンス/リプロダクション/トランスファーカーブはもちろん、CMYK色空間等の色ルックアップテーブルを見ることができるようになりました。
読み込みスクリーン –Krita 3.0からスタートアップ画面で何を読み込んでいるのかを表示するようになりました!
GUIの改良 –切り取りツール、補助線ツール、直線ツールのユーザーインターフェースを改良し、直線ツールのキャンバス上でのプレビューも改良しました。 フィルタ
グラデーションマップフィルタ –これは元々実装の予定がない機能でしたが、Spencer Brownさんにより突然にパッチが提出され、実装されることになりました!まだ開発途中であり、そのためフィルタレイヤーには使用できない状態となっています。
HSV調整フィルタにさらに色モデルを追加 –HSV調整フィルタにHSI・HSY・YCrCb色モデルのサポートを追加しました
G’MICフィルタのマルチスレッド化 –G’micフィルタがPCのプロセッサコアの全てのパワーを活用できるようになります。G’mic自体も大きく安定化しました。 その他の変更点
Greater合成モードの追加 –透過レイヤーへの描画のやり方を変えることになるでしょう(上がその例です)
GBR・GIHファイルのインポート・エクスポート –GimpのブラシフォーマットがKritaで直接保存・開けるようになりました。もう定義済みブラシタブのブラシ作成メニューに頼る必要はありません。
移動ツールの改良 –レイヤーに描かれているものを矢印キーで動かせるようになり、クリック1回あたりの移動距離も設定できるようになりました。
拡張色選択での輝度の正しい表示 –HSY空間色選択はガンマ補正輝度(ルマY’)を処理する前に線形化するようになりました。ガンマが手動で調整できるようになったことにより、HSY色選択は正しい輝度を提供できるようになりました。
より滑らかな混色 –色をのばすモードでの混色の滑らかさを改善しました。
ドット絵用ブラシプリセットの追加 –わざわざ自分でドット絵用のブラシプリセットを作る必要がなくなりました
新しいカーソル形状オプション –黒ドットと白ドットを追加しました。何が何でも正確さが必要なんだという人向けです。
グリッドツール及び遠近法グリッドツールの削除 ―後者についてはより高機能な上位互換機能である遠近法グリッド補助線を使えばいい話です。グリッドツールについてはグリッド・基準線ドッキングパネルに機能を移行させました。
倍率変更・表示範囲移動ツールの追加 –移植の過程でこれらのツールが復活しました。 公式マニュアルの改良 新しいマニュアルサイトです! –F1キーを押すとKrita.orgの学習エリアに移動できます。このサイトには皆さんの問題を解決する今まで以上の量の情報と高品質なリソースが置かれています。左には目次と検索欄が用意されています。
技術的なことに関する更新 3.0でKritaはQt5及びKF5への移植が行われました。しかし、変更点はこれだけではありません。
タブレットの取り扱いの刷新 –タブレット及び入力システムのコードを書き直し、Qt5を利用する様々な種類のペンタブレットをサポートしました。
Linux AppImage版 –Linuxユーザーは自分の使っているディストリビューションのレポジトリのアップデートを待たずとも最新バージョンを使えるようになりました。
Windows版のコンパイラの変更 –今回からMSVCの代わりにMinGWでのクロスコンパイリングでビルドを行うようになりました。これによってVcライブラリ 1.2をより安定したものにでき、G’micのマルチスレッド化、popplerライブラリによるPDFのインポート・エクスポートが可能になりました。この変更によって、MSVCはもう使えなくなりました。
起動の高速化 –内部での読み込み、管理を行うリソースを増やしました。これにより起動が高速化しました。
ビルドガイド –開発者とギークの皆さん向けのビルド説明書改良版
Windows及びOSXでのKritaのビルド –ソースコードからのKritaのビルドがより簡単になりました。Krita 2.9では特に難しくなっていたことです。ビルドの取扱説明書はソースコードの3rd partyフォルダの中にあります。Windowsでビルドを行った人もいます! 謝辞 これらの機能の一部についてはKickstarterキャンペーンによる支援あってこそ実装できたものです。また今回の3.0リリースの影には多くの才能あふれる人たちの活躍がありました。彼らのほとんどが自分の時間をバグ修正やテスト等Kritaをもっとよくするために捧げてくれたのです。彼らこそまさにKritaの心臓です。皆さんありがとうございました!
Boudewijn Rempt (オランダ)–Kritaのメンテナです。Boudはマーケティング、プログラミングそしてその間にあるもの全てを行いました。最初はと言えばファンタジーの地図を作成するためにKritaの開発に参加したはずが、プログラミングを我が物とした今ではコミュニティの管理、リリース記事執筆、リリースの広報、バグの分類等のいろんなことを行っています。ですがまだファンタジーの地図を描くことは諦めていないとのことです。
Dmitry Kazakov (ロシア)–コアレンダリングコンポーネントのメインプログラマです。Dmitryはあらゆる問題に謎の黒魔術じみた解決策を見出す才能をもっているようです。キャンバスとレンダリングエンジンの開発ありがとうございました。これによって3.0では高速プレビューとストレスないアニメーションの再生が可能となっています。
Wolthera van Hövell tot Westerflier (オランダ)–コミュニティ管理と学習部門を担当しています。開発者及びコンピュータにおける色の理論のエキスパートであると同時に、Woltheraはインターネットを検索して情報を集め、開発チームへのフィードバックを行う役目も担当しています。彼女はまた学習リソースの提供においても中心的な役割を果たしています。
Michael Abrahams (アメリカ)–Michaelはタブレットの取り扱い及びショートカットに関するコードの書き換えのほとんどを行ってくれました。これは技術的アップグレードとなる大きなプロジェクトでした。彼の貢献によってKritaのペンタブのサポートは今までで一番よいものとなりました。
Stefano Bonicatti (イタリア)–Windowsビルドの改良と安定化、多数のバグ修正を行ってくれました。
Friedrich Kossebau (ドイツ)–KritaのGitレポジトリの移動後にKritaのコードをクリーンアップしてくれました。またいくつかのクラッシュ・バグの修正にも協力してくれました。
Scott Petrovic (アメリカ)–ユーザーインターフェースのデザイン及び開発を行ってくれました。Scottはデザインについての議論を統括し、新機能の全てにモックアップを作成してくれました。またkrita.orgの管理と新マニュアルサイトdoc.krita.orgの開発も行っています。
Timothee Giet (フランス)–アイコンの再デザインによってユーザーインターフェースが改良されました。Timotheeはまたブラシプリセットのアップデートの管理も行っています。
Thorsten Zachmann –VcライブラリのアップグレードによってKritaのキャンバスの高速化が実現できました
Jouni Pentikainen (フィンランド)–Dmitryと一緒に新しいアニメーションシステムの開発にあたってくれました
Nataly Novak (ロシア) –拡張色選択の利便性についていくつかの修正を加えてくれました
Julian Thijssen (オランダ)–OpenGLサポートの改善を行ってくれました
GuruguruとTokiedian (日本)–jp.krita.orgの管理及びアルファベット以外の文字を使用する言語でのローカライズの問題の発見を助けてくれました。
Fazekas Laszlo –CSVアニメーションエクスポート機能の実装及びアニメーション機能でのいくつかのバグ修正を行ってくれました
Nicolas Guttenberg ―Greater合成モードを提供してくれました。
David Revoy (フランス)–お抱えアーティストとして、初期ビルドのテスト及びKritaの設計の方向性のかじ取りに大きな役割を果たしてくれました。
Tyson Tan (中国)–Kikiのデザイナーです。毎回のリリースについてスプラッシュスクリーンの画像のデザインを行ってくれました。またAMD特有のバグの発見は全て彼によるものです。
Spencer Brown (アメリカ)–グラデーションマップフィルタを追加してくれました。
Alvin Wong (香港)–Windowsのファイルエクスプローラで.kraファイルのサムネイルを表示するシェル拡張を開発してくれました。
Sven Langkamp (ドイツ)–バグ修正とポップアップパレットの改良を行ってくれました。
Raghukamath (インド)–お抱えアーティストとして、初期ビルドのテスト及びKritaの設計の方向性のかじ取りに大きな役割を果たしてくれました。
Moritz Molch (ドイツ)–ユーザーインターフェースの改良に関わってくれました。
Beelzy (ドイツ) –OSXビルドのテストと改良を行ってくれました
Probono ―Linux AppImageでの開発に大きな役割を果たしてくれました。これは彼無しでは不可能だったことです。 Beelzy
Wolthera
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